willy 物語 第二話 小鳥の記憶
数年前。
ウィリーが森の中で道に迷ってしまった時の出来事だ。
やっとの思いで開けた丘に出たウィリーは、遠くの方で木の根に腰掛けた少女が居るのが見えた。
道を尋ねようと少女に近づくウィリー。
「すみません……少し、お聴きしたいことがあって。」
少女は黙ったままウィリーをジッと見据えると、少し経ってからウィリーの手にあった包みを奪ってしまった。
すると其の瞬間____
包みの中から小鳥が顔を上げ、そして大空へ飛び立って行ったのだ。
まさに魔法のようだった。あの小鳥自身また大空を飛べるなんて思いもしなかっただろう。何故ならあの小鳥は少女に触れられるまで瀕死でだったのだ。ウィリーが道中で発見し保護したものの、回復せずに半ば諦めていたところだった。まさに奇跡だ。
「リサ姫様ーーー!」
何処からか兵隊の格好をした男が現れ、ウィリーは直ぐに拘束された。
どうやら迷っている内に山を超え、王家の敷地内に入ってしまったようだ。
その後開放されたものの、こっ酷く絞られてしまったウィリーは二度と王家の敷地に近づく事は無かった。
しかしこの出来事があってからというもの、ウィリーの心には常にあの少女が居る。リサ姫が、居るのだ。
そして月日が経ち、ウィリーは今日20歳を迎えた。
アスメリア王国では身分に関わらず、20歳になった者は成人と見なされる。
ウィリーはまだ大学生だが、もう立派な大人なのだ。
そして、成人1日目。とは言え特に何も変わらない日常____のはずだった。
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「なんだろう…目覚め悪いなあ。」
何か大きい音で目覚めた僕は、何故か冷や汗をかいていた。
「ウィリー…!お母さんが!!!」
1階から姉の声がしている。
今日は僕の20歳の誕生日。
きっとサプライズに違いない。
同日
〝リサ姫の花婿を一般公募する!!!〟
アスメリアにはビッグニュースが流れていた。
そして。
「決めた。僕は花婿になる!」
「待ちなさい!大学はどうするの?」
姉が止めるのも無理はない。
「休学するよ。」
「何考えてんの?」
けれど、
「僕はリサ姫の花婿になるんだ!!」
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