willy 物語 第一話 伝説と噂
「決めた。僕は花婿になる!」
「待ちなさい!大学はどうするの?」
こうしてウィリーは旅に出た。
これはまだウィリーが幼い時のお話。
“昔々、無病息災の神が玉貌の少女として地に降り立ち飢餓や疫病からアスメリアの民を救った”
これは、ウィリーが住むこのアスメリア王国に伝わる古い伝説で、人を励ましたり鼓舞したりする時によく話される。
中には、こんなものただの伝説に過ぎないと小馬鹿にしていた者も居たのだが、とある噂によって考えを一変させる事となる。
“リサ姫がユリ王子の怪我を治した”
詳しくは、リサ姫が手をかざしただけでユリ王子の怪我を直してしまったというものだった。
リサ姫というのは現国王の娘で、ユリ王子はその弟。当時まだ幼かったという事もあり二人ともまさに妖精のような美しさで、国民からも愛されていた。
そんな2人の噂は瞬く間に広まった。
大木から落ちたユリ王子は相当な大怪我を負っていたらしく、一瞬で治るような怪我では無かったようだ。
そして驚いた事にリサ姫はユリ王子だけでなく、近くにいた者たちの古傷や生まれつきの病気まで一緒に治してしまったというのだ。
“無病息災の神が玉貌の少女として地に降り立ち飢餓や疫病からアスメリアの民を救った”
この少女が実在するかもしれない。
ウィリーを含めアスメリアの国民はリサ姫から慈悲を受けることを浮足立って待っていた。
しかし一向にその時が来ることは無かった。
そして数年後、王妃が亡くなる。
この訃報によりリサ姫の力は全くのデマであったとされ、当のリサ姫は離れの塔に閉じこもる様になってしまった。
現在でもリサ姫は公の場に姿を表す事は無く、代わってユリ王子が公務をこなしている状態だ。
勿論、リサ姫の噂を今も信じている民なんていない。
でも、私とウィリーは見たんだ。
第二話